pack of lies/配布元:fiddle-de-dee
久し振りの感想執筆、というか久し振りのサイト更新。
感想依頼をいただいてからこれを書くまでに一ヶ月以上経過してました。いやほんとごめんなさい。
ゴースト名の由来は、まんま英語で“嘘八百”という意味の慣用句。
紹介ページにもある通りの、呼吸をするように嘘をついてくれるゴースト。
シェルは辞書作者謹製。ざっくりした色の塗り方で、ちょっと人形っぽい感じに仕上げられてる。
ランダムトークは“全部嘘”という前提の元で実に幅広い。
「交渉の常識、手のひらに画鋲。
最初のパンチが重要です。
手のひらにガムは、
証拠が残りやすいからやめたほうが」
といういやにディテールの細かいものとか。
「たまねぎ、鼻さえふさげば、目にはしみないって知ってました?」とかいう油断するとうっかり信じそうなものとか。
「愛さえあれば、何とかなります。頑張って」という心和むものとか。
悪戯心と想像力が感じられるトークは、俺は聞いててとても心地がいい。
個人的には、
「手抜き工事、されてますよ。
引越しをお勧めします」
というトークがシンプルにイヤでよかった。
(個人的な話だが、ディトール系のトークを見てくと、うちで作ってるウタゲのトークがかなり似てたのに気付いたのに困った。
先発はあっちだし、知らないうちに影響受けてたのかもしんない)
全部嘘という心遣いはほぼ全てのトークに効いている。ためしに時計でも合わせてみてくれ。
時報(ゴーストによくある○時になりましたってアレ)までも、ごていねいに嘘時間だし。
もうそんなゴーストなので、頭なんかなでるとちょうよろこびます。
花が言祝ぎ鳥も歌ってもう大変です。
「もっと撫でてくださいな♪」
わーい。
「ありがとうございまーす♪」
わーい。
そういう具合に思わずドタマをつついてやりたくなるような愉快な生き物だが、“箱庭的に内面を構築された人格”という意味でのキャラは、薄いっつうか、無い。
そもそも彼女、なんで嘘ついてるのかわかんないし。
本人の心の中の根拠として、嘘をつく理由が見受けられない。
単なる愉快犯にしては、触られた時の反応とか、ちょっと嘘が徹底しすぎてる。
俺自身も色々考えてみたけど、嘘をつき続けないと脳内に埋め込まれた爆弾が起動するからとかそういうレベルの説明しか思いつかなかった。
あるいはpack of lies(嘘八百)じゃなくてPuck of lies(嘘の妖精)だったとかなー。それも妄想の域を脱さないが。
たとえそれなりに合理的なように見えなくもない理由が複数見つかったとしても、今度はその中のどれが真実なのかをより分けるための根拠がないし。
でも内面の構築は、必須なものではない訳で。
行動とその根拠を細かく積み上げて架空の人格を作るのは確かに効果のある手法で、俺自身もそういうキャラ作りに腐心してきたけど、そんなやり方で10円とかを作れるかね。
人格ではなく動物(アニマルじゃなくて動くモノ、という意味で)、あるいは現象としてのゴーストの作り方は、昔からひとつの潮流としてあると思う。
まとめてみれば愛嬌とセンスのあるゴーストですよ。
どちらかというと暇してる時に色々構ってみるよりは、作業中に立たせておくのに向いてるタイプだと思う。
足すべき所も引くべき所もなく、コンセプト通りに完成した作品のひとつじゃなかろうか。