言追人/配布元:Word Spinner

 今回のゴーストは言追人(ことおいびと)こと衣笠 織芽(きぬがさ おりめ)さん。
 使用シェルは、確かフリーシェル『和』だったか。
 チャームポイントは右頬の泣きぼくろ(たぶん)。ある「ことば」を探して幾千里を旅する、正体不明のお姉さん。
 トークの傾向は、言葉に関わる思索と彼女自身の経歴に関わること。
 前者のトークが軽く説教臭いのは置いとくとして、後者は聞けば聞くほど彼女が何者なのか分からなくなっていきますよ。
 個人的には“実は宇宙人”説を推したいんだが。サン・テグジュペリ星の王子さまとかと似たようなノリで。
 
『這い舞う夜に散天を射抜き、果てより注ぐ僅かに光。
 其は歴史か幻像か。
 真と実の何処へと線引き、貴方は何に満足したい?』

『私に刃物を下さい。
 この心に突き立て、傷と血を確かめたいのです。
 血の流れる触感とむせ返る鉄の臭いにめまいつつ、痛みはジクウクとひびき鉄と赤と生を塗りたくる行為に耽溺する私は朦朧としながらもそれを感じるわたしをワタシとして認める事で私を見失うのですから。
 どうか私に、刃物を下さい』
 
 ふたつともランダムトーク中に出てくる文章だ。収集された言葉の一部と解釈するべきか。
 だが彼女が捜している「ことば」は、間違いなくふつうの意味での「言葉」とは別物だ。
 それが具体的に何かは良く分からないが、分からないなりに彼女は言葉についての考察と探索を繰り返している。
 何よりも強く求めるはずの「ことば」がただの妄想、しかも自分で産んだ妄想じゃなくて他人の妄想を抱え込んだだけかもしれないという可能性すら考慮してるんだからたまらない。
「ことば」のためにより高く、より遠くを目指し。
 またより低く、より近くを目指す。
 彼女はそんな人間だろうし、でないならばそういう人間であってほしい。
 
 触り反応は穏やかめ。怒りもしなけりゃ喜びもしないが、胸なでのかわし方は堂に入ってる。
 トークも上で書いた二種だけではない。たまにはボケも入ったりする。
 要するに、キャラは立ってるんだ。
 立ってるんだけど、それだけで絶賛するわけにはいかない。
 漫才が面白いとか、ソロでも言ってる事が明らかにツッコミ待ちだとか(この要素は多少あるな)、シェルがキャッチーだとか、ユーザに甘えてくるとか、エロ要素が入ってるとか、トークが極まって異常だとか、革新的な機能がついてるとか。ばらまいた謎に意外な答えをつけるとか、でなくとも伏線を回収するカタルシスがあるとか。
 そういう汎用的なフックがないなら、ゴーストの好悪は純粋に各人の好みによる。
 で、俺的には普通。好かないところもあれば惹かれるところもある。
 ゴーストとして当たり前ではあるが、彼女からの言葉は応答の余地なく投げかけられるものだ。ユーザとしては一方的な関係を呑めないと辛い。
 なら好きなところはというと、たまに飛行機はなんで飛ぶのんー、って言ってるようなところは好きだ。
 そんなところを褒められても困るか。
 でもそういうボケを抜かしても、刺さるトークは多少あった。お前の時間に関わる言葉とか。
 
 だいたいこんな感じ。
 あ、どうもトークが少ないと思ってたら辞書の記述ミスのせいでカットされてるトークがあるっぽい。
 dict-sent.kisの92行目。こういうのは純粋に勿体無いと思う。
 
 百個程度のランダムトークを主軸とするゴーストとしては、端正にまとまっていると思う。
 俺にできることは個人的な所感をまとめるくらいか。