栄子さんと萌迦さんその2:ツンデレさんと照れ屋さん
萌迦と栄子の共通点その2、通俗的な幸福に対する忌避感。
自分は普通の幸せを得てはいけない人間だ、という考えについての話。
栄子と萌迦のトーク総数は、どっちも1000を越えている。
で、萌迦についてはその半数以上が、上で書いたような戦闘に関するトークだ。
そのトークの中身は栄子とは真逆、“こうしたい”“こうする”“こうしてみせる”の塊。
強さと好き勝手を結びつける事からも分かる通り、戦闘においてあらゆる意味での我意を力ずくで押し通す、という気位が伺える。
でも、これも割と重要な話なんだけど。
別にそれをユーザに包み隠さず話す必要は、どこにもないんだよ。
「ゴーストにだって嘘つく権利ぐらいあってもいいと思うけど?」
http://uhighkaru.hp.infoseek.co.jp/Moepro.html
こう言われている通り、萌迦の話す全てが本当の事だとは思わない。
中には同じ辞書の中で相互矛盾してるっぽいトークもあるし。
でも逆に、全てが嘘という事はないだろう。
というかもし萌迦のトークの全てが嘘だったら、俺はこの記事をパソコンごと金属バットで粉砕して寝る。
まあ9割くらいは本当なんじゃねえ? と思う。詐欺を働くなら嘘と本当の分量はそのくらいが一番効果的だし。
ただ、嘘にしろ本当にしろ、数百個の話題を提供するのに動機が必要なのは変わらない。
「たとえいなくなったとしても
http://uhighkaru.hp.infoseek.co.jp/Moepro.html
私という存在は心の奥底に刻まれ続ける。
嫌な奴の顔ならなおさらのことだ」
この辺のトークから、最初はユーザに嫌われたいのかなー、と思ってたけど、本気で嫌われたいんならもっと手はある。
単純な話、萌迦には割と穏和な通常モードとキツい別モードがある訳で、なら常時別モードの方でいけばいい。
要は萌迦も話を聞いて欲しいんだ。誰かが何かを話す理由に「聞いてほしいから」という以外の何があるんだ。
じゃあ何を聞いてほしいのかというと、“自分のやり方を聞いてほしい”とまとめられるんじゃないかと。
それは萌迦の全てのトークに共通していると思う。
全精力を賭けて嫌われようとまではしていないかもしれないが、かといってユーザに好かれようとは全く考えていなさそうな。
嫌われてもいいから、理解されなくてもいいから、とにかくこういうものなんだ、と。ユーザを騙し、貶める事でしか表現できないものも含めて。
それは本物と偽物が入り交じった自分を見て欲しい、という、普遍的な欲求のあらわれだ。
一方栄子がそういう話をほとんどしないのは、上で書いた通りだ。
逆に言って、栄子は“話してもいい”。
一番ヤバいトークは栄子の所持する銃や兵器に関するものだしなー。犯罪だ、というすっげぇ分かりやすい意味で。
なぜ戦場に行き、そこで何を快楽だと感じたのか、栄子はユーザに話してもいい。
なぜそうしないかと言えば、そりゃユーザに嫌われたくないからじゃないのか?
栄子が話す事は、それがルールやガイドの類である限り、そのほとんどが正しい。
でも個人個人で分かれる内心の欲求は、その正しさを検証できるようなものではない。
栄子の内心が醜悪か清廉かは分からないが、ユーザがそれにどう反応するかは分かったもんじゃない訳で。
「ユーザさんも気をつけてくださいね」という栄子のよく口にする台詞には、自分のやり方をユーザと共有したい、という考えが、なんとなく見受けられる。
だとしても、一番根本的な内面の部分は、ユーザと共有できるものではない、と彼女は感じているらしい。
そういう意味で萌迦にも、栄子と通じる要素はある。
結局萌迦のやり方も栄子のやり方も、ユーザに真似られるようなものではない。
それにやっぱり萌迦はユーザに嫌われたいとも思ってる、と感じるんだよ。
なら“嫌われたい”という心の動きは、“好かれたい”の変奏曲だ。
評価の固定と、それを目に見る事での自己満足。それは“嫌われたくない”とも変わらない。
そして二人のその考え方は、上記の“通俗的な幸福に対する忌避感”とも繋がる。
おお、やっとつながった。
学校でたくさん友達を作って遊んで幸せ、女の子は優しい男の人とおつきあいして幸せ、お嫁さんになって幸せ、子供を産んで家庭を守って幸せ、ゆくゆくは孫子に見守られて幸せ、そんな感じ。
俺もそういうのを当然の常識として語られると嫌な気分になるけど、萌迦のそーいうものに対するネガティブ度合は語るまでもない気がする。
女の子の化粧や服装は社交的な武装にたとえられる事もあるが、萌迦の傷痕は社交を拒絶するための武装だ。現に隠そうと思えば顔の傷とかも隠す事ができるらしいし。
萌迦のロングスカートと長袖も、傷を隠すにはなかなか都合がよろしい。
で、栄子の基本シェルの服装も、ロングスカートと手が隠れるくらいの長袖なんだよな。
「女の子の手じゃないですよね…。
鉄の夢
固くて、傷だらけですから…」
栄子の手はそんな感じだそうだ。服の中がどうなっているかは、やはり分からないけど。
「でも、私がそんな、幸せになっても
鉄の夢
良いんでしょうか…?」
「…栄子?」
「…………」
「おい、栄子?大丈夫か?」
「え?!
あっ、えっと…何でも無いです。
大丈夫ですよ。こんなに元気です!」
「…ほんま、大丈夫か?」
心の中の話をするならば、栄子にも何らかの傷がある事は確実だろう。
“幸せになる”というのと、“幸せを感じる”とは別物だと思うんだよ。
幸せになる、というのは結構ファンタジックな概念だけど、それは自分の内面を肯定する、という事から切り離せない話だと思う。
それにもっと分かりやすい話、栄子に恋人ができたら、その幸せと戦場の実感を天秤にかけなきゃいけない。
最後に彼女がどちらを選ぶかはともかく、今の段階で幸せになる事を選んでいないのは確かだ。
- 栄子と萌迦は、両者とも実利の薄い戦いを求めている
- その結果の殺人も忌避しない
- そしてそれを求める自分の欲求を、萌迦は忌避されるべきものだと思っている
- 栄子もその点同じ事を考えているらしい
- 二人とも現状では、自分は通俗的な幸せを得てはいけない、と考えている
- 故に二人には似た部分がある
そんな感じで。
萌迦と栄子は、色々と違う部分もあるけど、似た部分も多いふたりだと思う。
めいかとえいこ。微妙に響きも似てるよね。
そう酷似しているかと言われれば心許ないが、俺のSSPの中にいる約950組のゴーストの中で、一番萌迦に似てるのは栄子だと思ってる。
二番目は僅差で桔飴。